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2022年12月13日 《 お知らせ 》

【京都市主催】11月18日開催 地域企業における 副業・兼業制度活用促進セミナー セミナーレポート①

~ヤフー「ギグパートナー制度」に学ぶ新しい人材確保術!~

京都市では、副業・兼業をはじめとした多様な働き方の普及促進を図っています。

今、企業は、コロナ禍を経て、テレワークなど働き方改革への対応を急速に進めています。ウィズ・アフターコロナ社会において多様な働き方への対応は、人材マネジメント上避けては通れない問題である一方で、外部人材活用における空前のチャンスともいわれています。 

 今回は、社員の副業・兼業、並びに、外部人材の活用に先進的に取り組む大手企業や、京都において柔軟な人材活用事例を持つ企業をゲストに迎え、自社での外部人材活用に踏み出していただくためのセミナーを開催しました。

【セミナー概要】
1 日時
令和4年11月18日(金)午後2時~午後4時

2 場所
ハイブリッド方式
・会場:キャンパスプラザ京都 ホール(2階)
・オンライン:Zoom

3 主なプログラム
(1)講演「ヤフー『ギグパートナー制度』に学ぶ新しい人材確保術!」
〇講師
大森 靖司氏(ヤフー株式会社 コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部 コーポレートPD本部長

(2)京都企業の事例紹介
〇講師
久保 昇平氏(関西巻取箔工業株式会社 取締役C.O.O)

(3)振り返りワークショップ(会場参加者のみ)

■講演 ~ヤフー「ギグパートナー制度」に学ぶ新しい人材確保術!~

創業当初から社員の副業を認めてきたヤフー株式会社が『ギグパートナー制度』を立ち上げ、外部の人材を積極的に活用するようになって、2年余り。
制度の立ち上げから実施までを担当してきたヤフー株式会社 コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部 コーポレートPD本部長 大森靖司氏に、外部人材と共に働くメリットと、実際に受け入れて気づいた課題をお話いただきました。

—–STEP1「市場を知る」
 ~数字やニュース、副業事業者情報から「副業市場」の輪郭を掴む!~

副業市場は買い手マーケット

副業市場と対比すべきものとして、正社員・転職市場があります。

先日、大手人材会社が発表した最新の転職求人倍率では、募集人数は応募者数の2倍強あって、職種によっては5倍、10倍を超える場合もあります。また、正社員採用は、採用の難しさもさることながら、選考に要する時間、入社までのリードタイム等、いい人材に出会えても募集から入社まで半年程かかることもあります。

対して副業市場は、圧倒的な買い手マーケットです。副業をしたい個人の方が非常にたくさんいらっしゃる一方で、副業求人が非常に少ない。副業マッチングサービスで募集をして最短5日でマッチングできることを謳う事業者もあります。

外部人材を受け入れる企業・地方公共団体も増えてきている傾向にありますが、とはいえ副業をしたい個人に対して、副業求人は、まだまだ少ないマーケットになっています。

ゆえに買い手有利の市場になっている状況です。

副業をする理由は?

副業をする理由で一番多いのは金銭面。「副収入を得たい」「本業の収入減リスクの分散」、そんな理由が目につくところです。

一方で、ヤフーで受け入れた『ギグパートナー』の副業理由で比較的多いのは、【興味・挑戦・還元】の3つです。「副業をやってみたい」、「今までの経験がどこまで通用するのか力を試してみたい」、「これまでの知識・経験・人脈をまとめて還元したい」、そんな方が多い印象です。

—–STEP2「副業活用の事例を知る」
 ~ヤフーの事例を通し「副業人材の受入/活用」を具体的に想像する~


▶ヤフーギグパートナー募集ページ:https://about.yahoo.co.jp/hr/gigpartner/

ヤフー『ギグパートナー制度』とは

ギグパートナー制度は、「ヤフーを副業先とする人材」を受け入れていこうというものです。

『ギグ』は、音楽セッションの意味で「この時だけは一緒に音楽を奏でよう」、そんな言葉です。ヤフーは、会社と社員はイコールパートナーであるという考え方から『ギグパートナー』と銘打ち、「その時だけは一緒に取り組んで、オープンイノベーションを起こしましょう」という狙いで立ち上げました。

なぜ『ギグパートナー制度』を始めたのか

きっかけは2年前、新型コロナウイルス蔓延の影響もあって、各社がリモートワーク・在宅勤務に舵を切り出したことです。ヤフーでも2020年から共有ワークスペースをオンラインにしていくとして、リモートワークを始めていきました。そんな中、経営層から出た声が「ヤフー社員ももっと副業できるよね」「逆にヤフーで副業をしたい人も多くなるんじゃないの?」、「もしそんな人材がいるなら受け入れてみようよ!」でした。人事としても副業人材の受け入れはトライしたいテーマであり、背中を押される形で『ギグパートナー制度』の立ち上げに臨みました。

社内にない知見・アドバイスが欲しい!

では、どんな人材をギグパートナーとして受け入れるのか。一番最初に、制度の立ち上げを担う私が想起したのは、反復・継続して事務的なことを任せる、いわゆる手を動かして何かをする仕事と考えていましたが、経営陣の考えは違っていました。「新しいことをするためのアドバイスが欲しい!」「壁打ちしたい!」という、普段得られない知見をもらいたいとの声でした。

結果、第一弾の募集職種は、〇〇アドバイザーというアドバイザーポジションが中心に。

ありがたいことに、全国津々浦々、海外も含めて応募は4,500名超、その中うち、10歳から80歳まで、従来の採用活動ではきっと出会わない、様々なバックグランドの方104名をギグパートナーとして受け入れることができました。

ギグパートナーの業務スタイル事例

ギグパートナーとして受け入れてからの業務スタイルは大きく3つです。

事例① レポートの提出
例えば、「これからのEコマースはどう変化していくか」といったテーマのレポートを提出してもらうケース。その内容次第ではさらに詳しくヒアリングをさせていただくこともあります。

事例② ディスカッション
定期的に何回か時間を取って、ヤフー社員を交えたディスカッションをしていくケース。

事例③ 定例ミーティング
とあるテーマ・分野について定例ミーティングを行い、ギグパートナーが持っている知見・ノウハウ・アドバイスをもらいながら実施をしていくケース。今ではもっともスタンダードなものとなっています。

第一弾で〇〇アドバイザーとして募集してみて気づいたことは、問の抽象度が高い点です。テーマが広すぎるとお互いに焦点が絞りづらく、やりづらいのではと考えました。

そこで、第2弾、第3弾とギグパートナーの募集をする中で、「社会貢献サービス企画」「転職領域サービス企画」「自治体向けのDX推進」など、領域を絞り、よりフォーカスしたテーマについてのアドバイザーを募集するようにしました。

人事部門での受け入れ

『ギグパートナー制度』を立ち上げた側として、副業人材の活用をもっと社内に広めたいと考え、人事部門でも受入をしてみました。

募集職種は「ダイバーシティー(D&I)推進」と「採用ブランディングアドバイザー」。比較的どの企業でもニーズはあると思いますが、いずれも専門家がおらず、副業人材の受入テーマとして募集できるものではないでしょうか。

自分たちで受け入れてみた結果、どのような活用であれば、またどのような分野・領域であれば、外部人材の受入が上手くフィットするのか、ヒントを得ることができました。

ギグパートナー施策での学び

[得たこと]

▶有用な外部知見

端的に、ものすごく有用です。外部の知見にすぐにリーチできますし、忌憚のない意見をくださいます。「ヤフーさんの採用ページは何が言いたいのか全く伝わってこない」とはっきり言われました。

また普段社内では全く認識できない情報を得られます。例えば高校生からは普段の授業・家庭科について教えてもらいます。その情報からヤフーきっずという児童・子供向けサービスのコンテンツのヒントを得られました。

▶受入が望ましい分野の仮説

様々な分野で受け入れたからこそ、受入が望ましい分野がわかってきました。一言でいうなら、自社が苦手な分野です。代表的な例を1つ挙げるならば、新規のプロジェクトです。社内に知見をお持ちの方が多くない領域は、副業人材を活用しやすいです。

▶検討スピードの圧倒的な加速

検討スピードは圧倒的に早くなります。すぐに得たい知見やノウハウにリーチができますので、プロジェクトがぐんぐん進んでいく。専門家という武器・力を得て、経営層へのプレゼンテーションに一緒に臨んでいただいた、ということもありました。

[注意すべきこと]

▶受け入れる覚悟

副業人材の受け入れは忌憚のない意見をいただけます。それは有用な一方で、耳の痛い内容も多い。それに対するオープンなマインドが必要です。また、副業人材を受け入れてから、いきなり初日から立ち上がるわけではない。当然、一定のインプットが不可欠です。これまでの経緯、メンバーの簡単な紹介、自分たちでできる部分とわからない部分、それらの情報をしっかりお伝えすることは通常の社員の受け入れ同様に大切ですね。

▶リスクの適切な把握と対処

一般的に、副業人材の活用の際は、業務委託契約が多いです。その場合は、例えば、偽装請負にならないように注意するなど、法的リスクを法務担当者交え今一度確認すること。また、一個人との契約の場合、損害賠償や権利の帰属といった法的側面はもちろん、パソコン貸与有無、どこまでの情報を渡すのかなどセキュリティーリスクの把握も重要でしょう。その他、報酬の設定もゼロから設計しなければなりませんね。

▶受入側の負荷

定例ミーティングでは、常に問を投げなければ、お互いにとって時間の無駄になってしまいます。また検討スピードが加速する分、自分たち自身がそのスピードについて行かねばなりません。


—–STEP3「初手のイメージを深める」
 ~最初に何をやると良さそうか、アクションベースでイメージする~

では、副業人材の活用を考えるうえで、どうしていけばいいのか。「個人」「会社(人事)」の両面で簡単にご紹介します。最初のアクションのヒントにしていただければ嬉しいです。

[個人として]

①自身で副業プラットフォームに登録する、副業を実際にやってみることをお勧めします。

大手系列の副業プラットフォームサービスであれば、比較的案件がそろっています。また、サービス説明のHPを見れば副業マーケットやスポットコンサルティングの情報も開示されているものもあります。

②副業プラットフォーム運営企業の担当者の話を聞く。

ヤフーのギグパートナー制度も開始から2年になりますが、ますます副業市場は活性化しています。副業人材を活用する上での報酬の相場感や他社の業務の切り出し方といった不明な点は、副業プラットフォームの運営企業の担当者に聞けば、他社事例も含め、非常に学びになるはずです。

[会社(人事)として]

①人事で受け入れてみる。

人事でも外部の専門家の知見を得たい領域(組織開発など)はあると思います。人事で受け入れた経験があると、他の部署・事業部にも副業人材の活用を働きかけやすいメリットもあります。

②副業経験がある社員や副業オファーが来た人の話を聞く。

副業をしている社員からの生の情報は受け入れを検討する上で非常に役立つでしょう。どんな契約形態なのか、どんな報酬水準なのかなど、自社の副業受け入れにおいても参考になる情報ばかりで、重宝します。

[Q&A]

Q:外部人材を受け入れるポジションに対して、社内人材がそれをやりたいと思っている場合、逆に社内のエンゲージメントが下がらないでしょうか。社内と社外のポジションの割り振りや工夫していることがあれば教えてください。

A:募集する職種によるのではないでしょうか。ヤフーの場合、社内に専門家がいないポジションで募集することが多いです。結果として、副業人材と社員とでそのポジションを奪い合うようなことは起きていないと思っています。

Q:ヤフーで受入の際、副業人材の採用基準・期待値・目標設定は?

A:副業人材を選抜する際には、ヤフーとしてアドバイスをもらいたい領域を具体的に言語化することから始めます。その内容について対話する中で、アドバイスをいただけそうか・今回の課題の解決ができそうかと対話を重ねていると、相手からも「こういう経験があって、この部分は活かせると思う」という回答を得られるので、そういった情報をもとに選抜をしていますね。

また、受入の初日が大事だと思っています。ヤフーではDay1と言っています。受入部署の長が、「こんなことに困っているんだ」と改めてテーマを投げる。期待値をTOPから明確に相手に伝えることを意識的やっていました。

その後は、業務委託契約ですので、一定の期間ごとにお互いの期待値をすり合わせながら、取り組んでいますね。

Q:副業というのは、若い方のアドバイスをもらうイメージ。ベテランの知識、経営者の経験も活かせる事例もあるのでしょうか

A:募集職種によりそうです。事実、副業人財プラットフォームが扱う分野には「顧問」という領域もあるのでミドルやシニアの方々の活躍できる領域ももちろんあります。

 

※(2)京都企業の事例紹介(3)振り返りワークショップ(会場参加者のみ)は、後日公開予定